大学での学び方
大学では、高校以前までよりも一層、一緒に学びを深めていく仲間を見つけて「学び合う」ことが重要になります。授業でのグループワークだけでなく、部活やサークル活動や友人との勉強会など、学び合いの機会が多くなりますし、効果的に学び合いの機会をつくることが、大学での学習を成功させる秘訣となります。
学び合いのメリット
モチベーションが高まる
ひとりで頑張ることも大切ですが、怠惰になってしまう時もあります。仲間と一緒に学び合うことで、モチベーションを維持しやすくなります。さらには、友人が自分にはない発想をしていたり、自分にはできないことができているのを見ると、「自分も頑張ろう!」という気持ちが芽生えるに違いありません。
「分かったつもり」が明確になる
頭の中では「理解したつもり」だったとしても、友人に説明しようとしたらうまくできない、という経験がありませんか。「学び合い」は、自分では理解しているつもりでも、実は十分に理解できていないところをあぶり出します。自分ひとりで考えるだけでなく、口に出して誰かに説明し、相手から疑問を投げかけてもらうことで、理解を深めることができます。
アイデアがひろがる
学び合いの中では、ひとりでは思いつかないアイデアや発見を得られることがあります。ひとりでは得られないアイデアとの出会いこそ、学び合いの中でもっとも楽しい瞬間の1つかもしれません。このような楽しい出会いを得るには、多様な知識や経験をもったメンバーが集まり、対等な雰囲気でリラックスして話し合える環境も大切です。
批判的思考の力が高まる
大学での学びは、受動的に知識を得るだけでは十分ではありません。その情報が本当に「正しい」と言えるのかを能動的に吟味し、疑い、自ら検証していく姿勢が大切になります。時には、教科書に書いてあることでさえも「絶対に正しい」とは言えません。
学問における「正しさ」とは常に暫定的なものであり、研究が進む中で日々アップデートされていきます。そして、何が「正しい」のかが決まる過程というのも、大きな研究者コミュニティの中での「学び合い」だと言えるでしょう。学問の世界では、お互いのアイデアを建設的に批判する力が求められます。
学び合いのポイント
話しやすい雰囲気づくり
「学び合い」の参加者が積極的に参加するためには、意見を出しやすい環境こそが大事になります。そこで、何よりも先にその場の雰囲気づくりを行うため、凍りついた雰囲気を壊すという意味の「アイスブレイク」を積極的に行います。特に初対面同士が集まったような場面では、ゲーム要素を取り入れた自己紹介を行うなどして、緊張感をほぐし、お互いの名前や個性を知ることが有効です。
目的と目標の共有
せっかくみんなで集まって学び合いを始めたとしても、それぞれがバラバラの方向で意見を出していては、建設的な学び合いにはなりません。そこで、何のために学び合う必要があるのか?という学び合いの「目的」を共有し、その時間内に何をどこまで進め、決めるのか、あるいはその時間内にどこまで到達するのかの「目標」を明確化することが重要です。学び合いの過程で目的や目標を見失いかけた時は、必ず立ち止まって確認するようにしましょう。
ファシリテーターの役割
学び合いの場では、誰かがファシリテーターとなり、全体の進行状況を把握し、状況に応じて話を整理したり、問いかけたり、流れを調整・変更したりする必要があります。また、ファシリテーターは、参加者全員が学び合いに「参加」できるように、発言していない参加者の発言を促すことも大切です。一方で、その参加者の発言が本題から大きく逸れてしまっていたり、1人で延々と話し続けるような場面では、状況に応じて、発言を抑制したりすることも必要です。ファシリテーターは、意識的に参加者のアイデアを引き出し、参加者の意識を1つの方向に収れんさせ、穏やかで建設的な雰囲気をつくることが求められます。
学び合いの内容を「見える化」する
学び合いの場では、話し合いの内容や流れを全員で共有することが大切です。その内容と流れを「見える化」するために、ホワイトボードやドキュメントなどに書いて(描いて)、情報共有をしましょう。このような「見える化」する過程を、レコーディング(主に文字や記号で書く)やグラフィック(図やイラストも駆使して描く)と呼びます。話の流れを「見える化」して参加者全員で共有することで、アイデアが出やすくなったり、それらのアイデアをまとめやすくなったりする効果があります。
ただし、「見える化」する際に、すべての情報を漏れなく網羅することは不可能です。話すスピードは、書く(描く)スピードの何倍も速いからです。そこで、キーワードだけでもできる限り漏らさないようにする、あるいは記号なども駆使して、なるべくシンプルに記録することを意識しましょう。
一方で、要約しようとするあまりに、発言者が用いた表現と大きく変えてしまうと、発言者が伝えたい内容と違ってしまうこともあります。「見える化」する過程では、どのように書き(描き)留めたらよいのか、発言者本人に確認しながら進めていくことが重要になります。