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2021/07/20 コラム

惑星研究のススメ

正直言って、学部1・2年の頃から惑星の研究をしたいと思って東北大学に入学された方は少ないのではないかと思います。
実は私も、学部3年の春頃までは惑星の研究をしようと思っていなかったし、東北大学が惑星の研究をしていることすらあまり知りませんでした。
しかし、研究室にいざ配属されてみると、「惑星の研究めちゃくちゃ面白いじゃん!」となり、すぐにその魅力にハマりました。

東北大学地球物理学科の惑星研究は、国内ではもちろん、世界的にもトップレベルの研究をしています。
学生のうちからいろいろな研究者たちと議論を交わしたり、国際プロジェクトに関わったりでき、とても刺激が多い分野でもあります。
今回はそんな惑星研究の魅力を皆さんに少しでもお伝えできればいいなと思い、このコラムを執筆しました。

 

惑星の研究ってどんなことをするの?

惑星の研究は実に多様です。
研究対象は惑星、衛星、小惑星、太陽など多岐にわたります。
そこからさらに地面や大気、磁気圏など、見る場所も変わります。
時間軸も惑星形成期や今より何十億年も前の時代、そして現在、また遠い未来も研究の対象です。
さらに面白いことにそれらは相互に関わり合っていて、その関係性を見つけていくことも重要な研究テーマの一つです。

太陽風が惑星大気に与える影響は?それは何十億年も前にはどうなっていて、今の金星・地球・火星の現在の姿にどのような影響を与えただろう?そして遠い未来にはどうなっていくだろう?というふうに、惑星研究にはまだ答えが見つかっていない壮大なテーマがたくさんあります。
最近は系外惑星についても様々なことがわかってきました。
我々の住む太陽系は普遍的な存在なのか?他の惑星も太陽系の惑星のような環境なのか?生命の住む惑星はあるのか?といった話題も盛んに議論されています。

それらの疑問に答えるために、私たちは様々な手法で解明の手がかりを探しています。
探査機や望遠鏡を使って観測する方法もあれば、シミュレーションを用いて物理現象を再現したり、隕石などのサンプルを調べるというやり方もあります。
それらはどれか一つだけあってもダメで、観測による制約とモデルによる物理現象の説明の両方が必要です。

私の研究室(惑星大気物理学分野)では観測とモデルの両方を行っています。
例えば、「観測で大気の物理量を見てたら〇〇という物理現象が起きてそうだから、シミュレーションで〇〇が起きているか確認しよう」となります。
そして、実際に〇〇という現象が起きていればそれは新しい発見です。惑星の研究では未発見・未解明のことがたくさんあるので、お宝を拾える確率が高いと思います。
実際に私の研究室では修士課程うちに投稿論文を執筆し、発表している方が多い印象です。

 

惑星研究は物理×化学×生物、全部できる!

地球科学には、物理学系のコースから進学してくる学生が多いのですが、高校の科目としては「地学」に含まれるため、どんな知識が必要なのかがのイメージがつきにくい分野かもしれません。
もちろん、基本的な地学の知識は当然必要になってきますが、惑星の研究では地学以外にも様々な知識が必要となってきます。

物理の中では力学や電磁気、熱力学はもちろん、流体力学や量子力学、統計力学まで色々な知識が必要です。
惑星科学と聞くと結構ふわっとしていてあまり物理的な感じがしませんが、いざ研究を始めてみるとかなり物理物理している印象です。
観測の解釈には波動の振る舞いやエネルギー保存などを考えなければいけないですし、シミュレーションコードを書いたり読んだりする時も力学や電磁気学の方程式のイメージができていないといけません。
私は日々苦労して、今でも物理的感覚が鍛えられているような実感があります。なので、物理をゴリゴリ使って研究をしたいという人は惑星の研究をかなり楽しめると思います。

物理に加えて、化学的な知識も重要です。
惑星大気中では様々な化学種が太陽光を吸収して分解されたり生成されたりしています。
そうしてできた化学種は循環によって運ばれて、空間分布として観測できたりします。したがって、化学を知ることが惑星の循環の物理を知る手助けとなるわけです。
また、太陽由来の高エネルギー粒子も大気組成を変える原因となります。太陽から高エネルギー粒子が降り注ぐと、大気中の分子と衝突し、それが引き金となり様々な化学種が生成されます。こういった現象は生命関連分子の生成との関連が示唆されていたり、過去の惑星環境において温暖化との関連も議論されています。

惑星科学は生物の研究とも密接に関わっています。
最近は宇宙における生物の起源や普遍性を研究するアストロバイオロジーという分野が盛り上がってきています。
「バイオロジー」という名がついていますが、原始生命の誕生を考える上で、過去の地球や他の惑星の環境を考察することが求められます。
そうして得られた情報を生命起源の物質生成などと紐づけることで生命の普遍性の議論が可能になります。
太陽系で生物の痕跡を探す活動も始まっています。
その候補として挙げられているのは、金星、火星、エウロパやエンセラダスなどの氷衛星や、土星の衛星タイタンです。
特に氷衛星は地球の深海の熱水噴出孔に似た環境があると考えられていたり、タイタンの大気組成は地球の過去に似ていると言われているので地球生命起源との関連があります。
このように、アストロバイオロジーは分野横断型でとても魅力的な新学問であるため、私の研究室でも人気のテーマの一つです。

 

まとめ

惑星科学にはまだ未解明のことがたくさんあり、一つ一つが壮大なテーマです。
頑張れば学生のうちに大きな発見ができるかもしれませんし、東北大の研究室にはそのための環境が整備されています。
惑星の研究には物理はもちろんのこと、化学や生物など分野横断的な知識が必要です。
言い換えれば、あれもこれも理解したい欲張りな人には最高のフィールドということです。
最初から全部できなければいけないということはありません。
これはどの研究室にも言えることだと思いますが、セミナーや勉強会を通じて教員や先輩方の指導をもと知識を増やしていきましょう。
惑星研究に興味のあるみなさんをお待ちしております。

この記事を読んで惑星研究の魅力が伝わったらいいなと思います。
そしてもっと研究内容が知りたい、研究室に遊びに来たいという方は突然の訪問でも結構ですので、青葉山セブンイレブンの真上の惑星大気物理学分野までお越しください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。

(SLA物理担当 狩生)

 

作成者:SLAサポート室