学びのヒント by SLA

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2019/10/24 学習ポイント

水素原子の軌道のイメージ~数式から描いてみよう

水素原子の軌道のイメージがつかない…。そう感じた人は、数式と軌道のつながりを考えてみよう!

 

水素原子の波動関数は、ルジャンドル陪関数R_{nl}(r)と球面調和関数Y_{lm}(\theta,\phi)の積で表されます。

(1)   \begin{equation*} \varPsi(r,\theta,\phi) = R_{nl}(r) Y_{lm}(\theta,\phi)  \end{equation*}

(この式の導出は結構難しいため,ここでは示しません。興味のある人は、厚めの量子力学の本を探してみよう。)

授業ではここから、s 軌道,p 軌道の話に移っていきます。式(1)と軌道は密接なつながりがあるのですが、授業ではあまり取り扱わないと思うので、ここで詳しく見ていこう。

 

今回は、s, p, d 軌道の外形と式(1)との関係を見ていきます。
外形を知るのに重要なのは、式(1)の中でもY_{lm}(\theta,\phi)です。Y_{lm}(\theta,\phi)は,l,mの値によって、

(2)   \begin{align*} Y_{00}(\theta,\phi) &= \left(\frac{1}{4\pi}\right)^{\frac{1}{2}} \\ Y_{10}(\theta,\phi) &= \left(\frac{3}{4\pi}\right)^{\frac{1}{2}}\cos\theta \\ Y_{20}(\theta,\phi) &= \left(\frac{5}{4\pi}\right)^{\frac{1}{2}}\frac{1}{2}(3\cos^2\theta -1) \\ &\vdots \nonumber \end{align*}

となります。
今回使うのはこの3つ。3つとも\phiが入ってないから、\phi=0のグラフを考えて、z軸でぐるっと回せばY_{00}(\theta,\phi)の形が分かります。

 

まず、一番簡単なY_{00}(\theta,0)を考えよう。いつでも、C_{00}=1/\sqrt{4\pi}だから、グラフは図のような半径C_{00}の半円になります。これをz軸で回転させると、球形の軌道が得られます。これがs 軌道です。

 

次に,Y_{10}(\theta,0)を考えてみよう。

(3)   \begin{align*} Y_{10}(0,0) &= \left(\frac{3}{4\pi}\right)^{\frac{1}{2}}\equiv C_{10} \\ Y_{10}(30,0) &= \frac{\sqrt{3}}{2}C_{10}, \qquad Y_{10}(45,0) = \frac{1}{\sqrt{2}}C_{10}, \qquad Y_{10}(60,0) = \frac{1}{2}C_{10}\\ Y_{10}(90,0) &= 0 , \qquad Y_{10}(120,0) = -\frac{1}{2}C_{10}, \qquad \cdots \end{align*}

となるから、図のようなグラフが得られます。原点からの距離がY_{10}(\theta,0)となるようにグラフを描いています。\theta=900になることと、\theta>90で符号が逆になることに注意。これをz軸で回すと、p_z軌道が得られます。
p軌道を書くとき+、-を付けたり、色を変えたりするけど、それは回す前の符号が逆だからです。

 

最後に、Y_{20}(\theta,0)を考えてみよう。

(4)   \begin{align*} Y_{20}(0,0) &= \left(\frac{5}{4\pi}\right)^{\frac{1}{2}}\equiv C_{20} \\ Y_{20}(30,0) &= \frac{5}{8}C_{20}, \qquad Y_{20}(45,0) = \frac{1}{4}C_{20}, \qquad Y_{20}(60,0) = -\frac{1}{8}C_{20}\\ Y_{20}(90,0) &= -\frac{1}{2}C_{20} , \qquad Y_{20}(120,0) = -\frac{1}{8}C_{20}, \qquad \cdots \end{align*}

となるので、グラフは図のようになります。これを回転させると、d_{z^2}軌道になります。

作成者:SLA