東北大生のための「学びのヒント」をSLAがお届けします。
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rank(階数)のお話 Part4
はじめに
ここではPart 1で述べた各々の階数の定義に従って, 与えられた行列に対するの階数の計算をみせようと思います. Part 2, 3 で各々の定義の同値性の証明を与えましたが, 難しくてわからなかった人はここでの例を見て雰囲気をつかんでください. もちろんどの方法からでも同じ結果がでてきます.
例その一
行列
の階数をもとめる.
階数の定義その一から
を
で生成されるベクトル空間としよう. この時
が成り立つ. また, の任意のベクトル
について
である. よって, 従って,
.
階数の定義その二から
三つのベクトル
を考える. は
と列ベクトル表示ができる.
だから 一次独立なベクトルの最大の個数は1. 従って,
.
階数の定義その三から
の3次小行列は
という形.
の2次小行列は
という形のものに限る.
の
次小行列は
という形のものに限る.
だから の小行列式で
でないものの行列のサイズの最大値は
. したがって
.
階数の定義その四から
に対して行変形をおこなう:
これは階数 の階段行列. よって
.
階数の定義その五から
に対して行基本変形と列基本変形をおこなう:
従って, .
例その二
例その一は極端すぎてわかりにくかったかもしれません. もうひとつ例を出しておきます.
の階数を求める.
階数の定義その一から
を
つのベクトル
で生成されるベクトル空間としよう.
一方,
だから . 従って,
.
階数の定義その二から
とおく. これらは一次独立なベクトルになっている(なぜでしょう. 考えてみてください). 一方で
だから, は一次従属. よって,
を 構成する列ベクトル
の中で一次独立な組の最大の個数は
. ゆえに
.
階数の定義その三から
まず, の小行列を全て列挙する.
次の小行列は
の4つある. それぞれ から
列目のベクトルをとって得られた行列である.
だから の小行列でその行列式が
でないものが存在するサイズの最大値は
. これから
.
階数の定義その四から
に対して行変形をおこなう:
変形後の行列をみると, これは階数 の階段行列. よって
.
階数の定義その五から
に対して行基本変形と列基本変形をおこなう. 階数の定義その四では行基本変形でやったので, ここではなるべく列基本変形を用いてやってみようと思います.
とおく (階数の定義その二を参照).
などに注意して列基本変形を行うと
となる. 従って, .