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2019/09/09 学習ポイント

rank(階数)のお話 Part 3

はじめに

今回は階数の定義その四と五の同値性について解説します.

 

基本変形の性質

基本変形の復習から始めましょう.

定義(行基本変形). 行列の行(列)に関する基本変形とは, 行列の行(列)を変形して新しい行列を作り出すための手続きである. 正確に言うと以下に述べる三種類の手続きのことを指す.

  • Type 1: 2つの行(列)を入れ換える.
  • Type 2: ある行(列)を \alpha\neq 0 倍する.
  • Type 3: 行列のある行(列)を \alpha 倍して別の行(列)に加える.

行基本変形をしたい時は左から, 列基本変形をしたい時は右から基本行列をかければ良いのでした.

階数の定義その一で定義された階数は次の性質を持っています.

命題. A(n,m) 行列, B(m,l) 行列とする. このとき

    \[ \mathrm{rank} AB\leq \mathrm{rank} A,\ \mathrm{rank} B \]

が成り立つ.

証明. f=f_{A},g=g_{B} とおく. このとき

    \[ \mathrm{rank}AB=\dim \mathrm{Im} f(g(V^l))\leq \dim f(V^m)=\mathrm{rank} A. \]

が成り立つ. また f\circ gf: g(V^l)\longrightarrow f(g(V^l)) という部分空間上の線形写像とおもうと, 次元定理を用いることで

    \[ \mathrm{rank}AB=\dim f(g(V^l))\leq\dim g(V^l)= \mathrm{rank} B \]

がわかる. 以上から

    \[ \mathrm{rank}AB\leq \mathrm{rank}A,\ \mathrm{rank} B \]

がわかった. (証明終わり)

 

同値性の証明

定理. A(m,n) 行列, P,Q をそれぞれ m,n 次の正則行列(基本行列の積で表される行列)とする. このとき

    \[ \mathrm{rank} PAQ =\mathrm{rank} PA=\mathrm{rank} AQ=\mathrm{rank} A. \]

これは A の階数は基本変形を行なっても変わらないということを意味している.

証明. \mathrm{rank}PA=\mathrm{rank} A は以下のようにして分かる.(他の等号も同様に分かる.)

    \[ \mathrm{rank} PA\leq \mathrm{rank} A=\mathrm{rank} P^{-1}(PA)\leq \mathrm{rank} PA. \]

(証明終わり)

 

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作成者:SLA