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ヤコビアンを用いた座標変換
前置き
ヤコビアン とは、
個の変数
が
個の変数
に依存している時、つまり
(1)
である時、
(2)
で定義される行列式です。(2)式の真ん中の辺はただの記法で、どの変数たちとどの変数たちが対応しているかを分かりやすくするためのものです。
このヤコビアンが、実際に物理数学でどのように利用されているか見てみましょう。
ヤコビアンの利用方法
皆さんは、重積分を計算する際の変数変換(例えば の直交座標から
の極座標への変換)が面倒だと思ったことはありませんか。特に習いたての頃は、いちいち図を描いて微小面積要素
(3)
及び微小体積要素
(4)
を求めていた(いる)のではないでしょうか。
この求め方は座標変換の基本で大事な考え方ですが、複雑な座標変換や変数の数が4つ以上になると対応できなくなってしまいます。しかし、ヤコビアンを用いることで、面倒な座標変換を図に頼らず、機械的にできるようになります(極座標で図を描いて微小体積要素を求められない人は、そちらに慣れてからヤコビアンを使うことをお勧めします。)
さて、ヤコビアンの利用方法ですが、ある座標系 とある座標系
が(1)式の関係にあるとき、
での重積分
は、(2)で定義したヤコビアン を用いて、
(5)
と表せます。ただし略記法として を用いた。(なぜこのように表せるのかはここでは議論しません。興味のある人は、多変数関数の微分積分についての数学の専門書を読んでみてください。)
さて、これを実際の重積分での座標変換、直交座標系から極座標系への変換に適用してみましょう。まず、2次元では(3)より
(6)
と変換できることが分かっています。では、ヤコビアンを利用してこれを求めてみましょう。この場合のヤコビアンは(2)から、
となって、
から最右辺を計算すると、
となります。これを(5)に適用すると、
となって、(6)と一致していることが分かります。
次に、3次元において直交座標系から極座標系への変換を行ってみましょう。やることは2次元と一緒です。まず、ヤコビアンを求めます。(4)より、
(7)
であることが分かっています。では、ヤコビアンを用いてこの表式を求めましょう。(2)より、この場合のヤコビアンは、
となります。変数の数が多くなると、必然的に行列式の計算が大変になるので、線形代数学の勉強をしっかりしておきましょう。
から最右辺を計算すると、
となります。これを(5)に適用すると、
となって、(7)と一致していることが分かります。
このように、ヤコビアンを用いることで、重積分の変数変換を機械的に行うことができるようになり、覚えておくと便利です。ぜひ、いろいろな座標系に適用して、使いこなせるようになってください。