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極座標表示ラプラシアンの導出
前置き
(1)
ここでは、2次元での極座標表示ラプラシアンの導出方法を紹介します。
極座標表示のラプラシアン自体は、電磁気学や量子力学など様々な物理の分野で出現するにもかかわらず、なかなか講義で導出する機会がなく、導出方法が載っている教科書もあまり見かけないので、導出方法がわからないまま使っている人が多いのではないでしょうか。
2次元の極座標表示が導出できてしまえば、3次元にも容易に拡張できますし(計算量が格段に多くなるので、容易とは言えないかもしれませんが)、他の座標系(円筒座標系など)のラプラシアンを求めることもできるようになります。良い計算練習になりますし、演算子の計算に慣れるためにも、是非一度は自分で導出してみて下さい。
このページでは、導出方法や計算のこつを紹介するにとどめます。具体的な計算は各自でやってみて下さい。
導出
下準備
ラプラシアンは演算子の一つです。演算子とはいわゆる普通の数ではなく、関数に演算を施して別の関数に変化させるもののことです。ラプラシアンに限らず、演算子の計算の際に注意するべきことは、常に関数に作用させながら式変形を行わなければならない、ということです。今回の計算では、いまいちその理由が見えてこないかもしれませんが、量子力学に出てくる演算子計算ではこのことを頭に入れておかないと、計算を間違うことがあります。
このことを踏まえ、 に依存する関数
を用意しておきます。 は
に依存している
ため、
が
の関数であるとも言えます。
さらに、 と
の関係
(2)
や、一般にある関数 に対し、
が
の関数の時に成り立つ、連鎖律と呼ばれる合成関数の偏微分法
などがあれば準備は完璧です。
導出
ラプラシアンを に作用させた、
(3)
を式変形して、極座標表示にします。方針としては、まず連鎖律を用いて の極座標表示を求め、に上式に代入して、最終的な形を求めるということになります。
連鎖律より、
がそれぞれ成り立ちます。上式を見ると、 を計算すれば、
の極座標表示が求まったことになります。これを計算するためには、(2)式を
について解き、それぞれ
で微分すれば求まりますが、実際にやってみると、
などとなって、 を計算するのは面倒ですし、
を
で微分するとどうなるか分からないという人もいると思います。自習中なら本で調べればいいですが、テストの最中だとそういうわけにもいきません。そこで、行列の知識を使ってこれを解決しましょう。
が計算できる人は飛ばしてもかまいません。
連鎖律から
がわかります。これを行列でまとめてみると、
となります。 を計算するのは簡単ですね。(2)から求めて代入してみると、
となるので、右辺にある 行列の逆行列を左からかければ、
の極座標表示が求まります。実際に計算すると、
と、求まりました。
ここまでくれば、あとは を計算し、(3)に代入するだけです。
が
に依存することに注意して計算すると、
という答えが出てくるはずです。このままでも良いのですが、(1)式の形が良く使われるので、(1)の形に変形しておきましょう。
これは、右辺から左辺に変形してみると、わかりやすいです。これで、2次元のラプラシアンの極座標表示が求められました。