東北大生のための「学びのヒント」をSLAがお届けします。
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秘伝英語学習の巻
言語一般を学ぶ際に、自分で発音する練習をしなければ会話でパッと言うことは出来ないというのは当たり前のことです。「パッと言える」というのは頭の中に特定の語や句、文が音の連鎖として蓄えられている状態であると思います。
例えば小学一年生で九九を習った際に、九九を最初は考えながら言っていたことでしょう。しかし、慣れてしまうと「8×7は、えーと56」というように頭の中で考えることはもうないのではないでしょうか。「はちしち」という音の連鎖を聞くと次に出てくる「ごじゅうろく」という音の連鎖が勝手に浮かんでくる、これは音楽や詩でも同じことだと思います(「Happy birthday to you, happy birthday to you…」、「古池や蛙飛び込む水の音」など)。
SLA英会話カフェに来ることは、自分の頭の中にあるその個々の音や音の連鎖を、その会話の状況に応じて適切に使用する練習になると思います。しかしながら、先に述べた、九九を覚えるのと同じ音の連鎖を蓄える過程をスキップしてしまうと、英会話カフェでそもそも自分が使える音の連鎖の総量が少ないので、なかなか言葉が出てこないということになると思います。
ではこの音の連鎖はどう蓄えればよいのでしょうか?
テニスのようなスポーツを思い浮かべてください。
テニスのトッププレーヤーである錦織圭選手や大阪なおみ選手は、永遠に球を打ち返す実践練習しかしていないのでしょうか?実践練習だけで、コートの端のボールをいつかは打ち返せるようになるのでしょうか? 答えはNOであると思います。遠くのボールを打ち返すようになるためには、瞬間的に移動できる距離を増やすための筋肉をつけなければなりません。つまり、基礎となる筋肉をつけることも大事で、そのために筋トレをしているのです。
この「遠いボールに反応して動いて打ち返す」というのが実際の会話だとしたら、「筋トレ」にあたるものはなんでしょうか? 僕自身の見解としては、音読がまさにその答えであると思います。何度もまとまった短い文章を音読することで頭の中に一定の語や句、文のストックを蓄え、これが実際の会話で使える「筋肉」になると考えます。
英会話の「筋トレ」おすすめ方法
「じゃあ、この筋トレはどうやってやったらいいの?」
ここでは、僕が実際に使っている英語学習サイトを挙げて、その「筋トレ」を紹介させていただきます。
私が利用しているのは、NHKのインターネットサイト「世界へ発信!ニュースで英語術」です。このサイトは無料で使用することができ、平日月曜日から金曜日まで、一日一つ最近の国内外のニュースを取り上げています。ニュースは実際にNHK Worldで放送されたニュース内容です。約1分にまとまっており、短くも長くもなく、音読練習には最適です。5分や10分の動画のシャドーイング練習は、あまりおすすめしません。これは個人差があるとは思いますが、長い時間シャドーイングしていると、ただ何も考えずだらだらと音を真似して発音してしまうことになりがちだからです。そのため、1分程度の音源を繰り返しした方が、頭に残りやすく実際の会話で使えるフレーズが増えていきやすいと思います。
ニュースの内容は、例えば2019年2月20日掲載の「北海道雪上綱引き大会」や同年3月20日掲載の「アメリカ名門大学で不正入学」などがあります。他にも経済や政治の話などもありますが、最初は自分の好みのニュースを選んで音読練習をしてみると、続けやすいでしょう(あまり自分の興味のない内容でやっても、つまらなくて続かないと思います)。
この「ニュースで英語術」をお勧めする理由は、無料であるにも関わらず、非常に内容の濃いところにあります。ある日のニュースページをクリックすると、画面左上にニュースのクリップ動画、その右側に大まかなニュースの概要が現れます。その下にはニュースのスクリプトがあり、そのスクリプトに合わせて2つの速さで音源を再生することが出来ます。このページの他にも、その日の単語を確認できる「フラッシュカード」、ニュースを一文ずつ解説してくれる「センテンスごとに学ぶ」、その日のニュースの中でもキーワード一つを取り上げ、語感をより緻密に学べる「キーワードで学ぶ」というページがあります。
これらのページを使って、実際に私が行う一セットの音読練習は、以下の通りです。
英会話の「筋トレ」・・・まずはアップ!
1.ページ右上のニュースの概要を読み何のニュースなのかを把握する(この時、下にあるニュースのスクリプトは見ない)。
2.ニュースのクリップ動画を実際に見てみる(ここでも下のスクリプトは見ないで集中して聞く)。
3.ニュースクリップの下にある、5分間のラジオ解説動画を聞きながら、スクリプトを発音する。
ラジオ番組はだいたいの説明なので、全ての文を解説するわけではありませんが、解説者が発音したのに続いて発音しています。
4.「センテンスごとに学ぶ」のページに移動し、一文ずつ文法事項を確認していく。
私は一文発音した後、なじみのない語句を辞書で確認しながら、解説を読みます。文法事項が理解出来たら、付属してある音源を再生し、真似して一文を発音し、最後に自分で同じスピードでその文を発音します(ネイティブスピーカーの発音を真似しながら読むと、発音も改善されていくと思います)。これが一文終わったら、最後まで繰り返して進んでいきます。
5.「キーワードで学ぶ」のページに移り、その日のキーワードの解説を読む。
ページの下の方には、キーワードを用いた、例文が2つあるので、それも4同様に解説と発音を行います。
私のこだわりとしては、ここの例文2つは暗記するまで音読します。
ここまでニュースの内容、構文理解し全ての準備が整います。私にとってここまでは、筋トレ前のアップ程度であり、今から本格的な筋トレを行います。
英会話の「筋トレ」・・・いよいよ本番!
6.ニュースのトップページに戻り、遅い音源、早い音源それぞれスクリプトを見ながらオーバーラッピングする。
ここで注意ですが、ただ発音するのではなく、理解した構文と意味を考えながら発音してください。これをしないと、ただ聞いた音を発音する機械的な作業になってしまします。
7.ニュースのクリップ動画を再生して、6を行う。
8.ニュースのクリップ動画で、スクリプトを見ずにシャドーイングをする。
ここで自分がどれだけその日のニュースを理解しているか、把握できると思います。
9.音無しで、スクリプト全体を自分で発音してみる。
10.ニュースのスクリプトの左上の「ボキャブラリー」というタブを開いて、単語を一つずつ発音して確認する。
11.10で確認した単語と今日の練習を基に、その日のニュースを自分なりに英語で話してみる。
この時意識する点として、もしこのニュースを知らない人に伝えるとしたら、どんな言葉を使って言えばいいのか考えながらすると、実際の英会話の話題にも使えるでしょう。なので、ニュースの言葉を完全に再現すること必要は無いです。
12.最後に、英語のスクリプトを自分で発音して、自分が思い出せなかった内容などを確認する。
以上が、私がほぼ毎日20~30分かけて行っている音読練習です。1分間のニュースを、合計10回程度は自分で発音することになります。
こうして学んだことは数日後に忘れてしまうこともありますが、ニュースのストーリーや必須のキーワードは長く覚えています。こうして残ったものが、筋肉となり、実際の会話に使える音の連鎖のストックとなります。毎日この筋トレを行い、その筋トレの成果を英会話カフェで実際に発揮することで、効率的な英語学習になると思います。
私は学部2年の頃から続けていますが、最初のうちは、英会話で話せない悔しさのはけ口のようになっていたと思います。スピーキング練習を考えている方は、この筋トレと実際の会話、英会話カフェを並行して行ってみてください。ちなみに「世界へ発信!ニュースで英語術」はNHK教育の番組で放送もされているので、良かったら見てみてください。
(SLA英語担当 田村)
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