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Suicaはどうして電池なしで改札と通信できるのか?
<物理のコラム~身近なものと物理の関わり>
地下鉄・電車に乗る人にはお馴染みのSuica。
このSuica、どうして電池なしで改札と通信できるのでしょうか?
これには電磁気学のある法則が関わっています。
今回は、その解説をしていきます!
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Suica等の非接触ICカードに使われている重要な物理法則は…
「ファラデーの電磁誘導の法則」です!
非接触ICカードはその名の通りICチップがカード内に埋め込まれており、ICチップと改札等の読み取り機の間で通信を行うことによって支払い等を行なっています。
ICチップは電子機器ですからどこからか電気を得なければいけません。
この電気を生み出すためにファラデー電磁誘導の法則が大いに役に立っています。
ファラデーの電磁誘導の法則といえば、コイル内の磁場を変化させると誘導電流が流れる、あれです(図1参照)。
<図1.(a)ファラデーの電磁誘導の法則の概要、 (b)電磁誘導による電流の発生の一例>
実は改札等の読み取り機からは磁場が発生していて、カード内部にプリントまたはエッチングされたコイルをその上を通過すると、カード内のコイルに誘導起電力が発生し、ICチップが動作します。
この時に誘導起電力によってカードのコイルに電流が流れ、磁場がカードから発生し、今度はこの磁場により読み取り機内のコイルに誘導起電力が発生します。
カードのコイルに流れる電流を適切に変調してあげれば、カードから発生する磁場も変調されるので、データ通信が可能となります(図2)。
<図2. 改札の読み取り機>
ここから常に磁場が発生しています。
カード中心には印刷またはエッチングによって、コイルとICチップを格納した非常に薄いインレット・シートがあり、表面は化粧用のシートで覆われています。
カード内部回路の概念図を図3に示しますが、まとめると読み取り機の発生する磁場がカード側の電源をつけると同時にデータを搬送し、カード側が動作した時に発生した磁場を読み取り機が受け取ることでカード内の情報を読み取り、書き換えを行なっているのです。
<図3. カードとリーダライタ(読み取り機)の構成[1]>
読み取り機からの磁場が有効な範囲は大体10cmくらいなので、カードと読み取り機多少離れていても通信可能ですが、離れすぎていたり、カードが斜めだったりするとカードへの電力移送などがうまく行かず動作しません。
このように、非接触式ICカードが電池なしで動作するには、ファラデーの電磁誘導の法則が重要な役割を果たしています。
これを機に、他に身近にファラデーの電磁誘導の法則が潜んでいる例を探してみてください。(例えばキッチンのコンロとか)
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[1] NTT技術ジャーナル2018年3月pp.81-85
(SLA 物理部会)