学びのヒント by SLA

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2019/11/20 学習ポイント

よく分かる共鳴[有機化学]

I「みなさんこんばんは。今日は共鳴の勉強をしていきましょう。みなさん『共鳴』って言葉聞いたことありますか?」

T「共鳴…って片方が振動していたら、もう片方も振動してくる現象ですよね?」

I「そうですね、普通はそういう意味で正解です…が、有機化学では少し違った意味になるんですね。」

A「えー!なになにー?!?!」

I「はい、大まかに言ってしまうと分子内での電子の移動です。実際と、この言葉のイメージが違っていてよくわからなくなってしまうので、これからは『非局在化』と言いなおしましょう。」

A「ヒキョクザイカ?」

I「そうです、電子あるいは電荷が1か所に集まっていないで分散しているという意味ですね。こちらの方がイメージしやすいと思います。」

A「へー、でもそんなこと言われても全然わかんねぇよぉ!!」

I「ではこちらをご覧ください。」

H「これは…酢酸?」

I「そうですね、酢酸です。この酢酸という名前はニックネームのようなもので、本名は別にあるのですがそれはまた次の機会に話しましょう。では、Uさん!この酢酸がイオンになった形はかけますか?」

U「はい、こんな感じですよね?」

I「はい、半分正解です。高校まではこれで正解でした。ではこれからどうしたらいいか一緒にこの図を見ながら勉強していきましょう。

皆さん、点電子式を思い出してほしいのですが、結合も、もちろんイオンも電子が深く関係していましたよね?加えて,二重結合周りの原子は平面上にあり、π結合はその平面の上下に分布していました。」

I「この絵で原子の周りのもやもやした部分がありますね?これはここに電子が存在していることを表しています。非共有電子対も本当は同じように書かなくてはいけないのですが、今回の話にあまり関係のないですし見にくくなるので省略して点電子式で書きました。今まではこれをUさんの書いたように表していたんです。」

S「えーっ!別にいいじゃないの!?同じじゃないんですか?!」

I「そうですね、確かに同じです。ではなぜ『半分』正解だったのでしょうか?少し考えてみましょう」

 

I「皆さん苦戦しているようですね。ではヒントです。最初の方に私は『非局在化』という言葉とその意味を言いましたね?」

H「あっ!!!分かった!!左下のOに偏ってるマイナスの電荷が非局在化するんだ!!

I「そうです!Hさん正解です。」

H「でもそこからどうなるのかよくわからないや。さっき先生が言ってた結合も電子っていうのが関係あるんですか?」

I「いいところに気付きましたね!まさにそこなんです!では次の図を見てみましょう。」

I「負に帯電したOが持つ電子対のうち、1組が隣のCとの間に移動します。こうして新しいπ結合を作ることでOは負の電荷を解消できますからね。ですが電子が移った先のCから見るとどうでしょう?」

T「あっ、先生無理ですよ。これじゃあCから5本結合の線出てることになっちゃいますもん。」

I「そうですね、ですのでこのCから1本結合線を外さなければなりませんがC―C結合はとても固いので外すのは厳しいですね。詳しい理由は省きますがここでは一番外しやすいC―Oπ結合が外されます。まとめると次のようになります。」

I「そうするとこのように負の電荷がもう片方のOに移動したものが書けますね?」

S「ほんとだ~。だからIさん『半分』なんて言ったんですね~。」

I「はい。反応機構を曲がった矢印を使って書くときはこれらを実際にノートにいちいち書くのはめんどくさいので、最初にUさんのように書いても差し支えありません。ですがこのように電子が非局在化していることを覚えておいてください。共鳴構造を書きたいときは次のように書くのが普通ですのでその時使いやすい方を選んで使ってください。」

T「確かに動いてるものは紙に書くことはできないですもんね。」

I「このように電荷が非局在化することでその構造が安定化されて、それが酸性度や塩基性度、その化合物の安定性などにも広く関係してくるんです。それでは時間になりましたのでまた次回お会いしましょう( ゚ω゚)ノシ」

作成者:SLA