学びのヒント by SLA

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2019/07/12 学習ポイント

広義積分の計算方法とその理解の仕方~そんな計算していいの??~

解析学A(1変数の微積分)や解析学B(多変数の微積分)では、「広義積分」と呼ばれる内容を学習することになります。

「広義」とありますが、これは「広い意味での」ということです。広義積分、つまり「広い意味での積分」とはどのような積分のことをいうのか、あなたは知っていますか?

「広い意味」とありますが、一体何を含んでいるのか・・・?

あなたは答えられますか?

きちんと答えられる人も答えられない人も、このページを読んで、数学の厳密さや表現法を是非味わってみてください。

 

 

広義積分って・・・なに?

では、何をもって「広義」といっているのか?

注目すべき部分は「積分範囲または関数」の有界性にあります。

大ざっぱにいえば、広義積分は「一見発散しそうで発散しない面積」なのです。

 

そもそも高校数学での(1変数の)定積分の計算は、積分範囲は有界閉区間(=線分)、被積分関数は積分範囲上連続な関数のみを扱いました。

また、本来の1変数の定積分の(代表的な)定義は、積分範囲は有界閉区間、被積分関数は積分範囲上有界かつ区分的に連続な関数として定義されています。

数Ⅲでいう区分求積法のように、求める面積(=積分値)をいくつかの短冊状の面積(=区間×高さ)の和で近似して、1つ分の短冊の区間を限りなく細かく分けたときの各短冊の面積の総和が定積分の定義です。

  

 

では、下図のように積分範囲が非有界、もしくは関数が積分範囲内で発散している(非有界の)場合、一体どうすればよいのだろう?

・・・というわけで、広義積分の登場です。

 

広義積分は「危ないところまで考慮に入れた積分」であるというイメージを持ってください。

厳密な定義(1次元の場合)は次のようになります。(多変数の場合でも同じような定義があります)

\bullet [a,+\infty) 上連続な関数 f による, +\infty での広義積分 ((-\infty,b] の場合も同様)

    \[ \int_a^{+\infty} f(x)\,dx:=\lim_{b\to\+\infty}\int_a^{b}f(x)dx\]

 

\bullet (-\infty,+\infty) 上連続な関数 f による, -\infty, +\infty での広義積分 ((-\infty,+\infty) の場合も同様)

    \[ \int_{-\infty}^{+\infty} f(x)\,dx:=\lim_{a\to-\infty, \ b\to\+\infty}\int_a^{b}f(x)dx\]

 

\bullet (a,b] 上連続, x=a で不連続な関数 f による, x=a での広義積分 (x=b で不連続の場合も同様)

    \[ \int_{a}^{b} f(x)\,dx:=\lim_{\varepsilon\to+0,}\int_{a+\varepsilon}^{b}f(x)dx\]

\bullet (a,b) 上連続, x=a,b で不連続な関数 f による, x=a,b での広義積分

    \[ \int_{a}^{b} f(x)\,dx:=\lim_{\varepsilon\to+0,\ \delta\to+0}\int_{a+\varepsilon}^{b-\delta}f(x)dx\]

要するに、(危ないところを除いた)少し狭い閉区間で積分値を求めて、その区間を広げていくという考え方です。

つまり、「これまで構築した理論に帰着させて、最後に極限をとる」という考え方です。

 

この考え方、うまいと思いませんか?

言われれば確かにという感じがすると思いますが、うまいと思ってほしいのです。

この考え方は他の数学の理論でも度々用いられています。

数学をきちんと学びたい方は、頭の片隅に置いておいて下さい。

では、実際の計算例を2通りで見てみましょう。

 

 

広義積分の計算例

ここでは典型的な例を用いて、広義積分の計算例をご紹介します。

例題はこちらです。

 

定義に基づいて計算すると次のようになります。

「極限を取る」という操作は、無限大やゼロに関する演算を許すことで、これまでの積分のように計算することができそうです。

そこで、少し考えてもらいたいことがあります。

「広義積分は通常の積分と同じように計算して良いのか?」ということです。

あなたはどちらだと考えますか?

計算して良いと思いますか?まずいと思いますか?

 

ここからは、意見が分かれるところかと思うので、作成者の一意見として参考にして下さい。

私の意見は、「本当はまずいが、通常の積分と同じように計算しても大丈夫なことが多い」というものです。

 

では、通常の積分と同じように計算すると何が、どのような場合のときに良くないのでしょうか?

何が良くないかというと、「積分値が両端の値のみで決まってしまうこと」と、「極限を取ること」です。

例えば次の2つの図で、斜線を引いたところの面積について考えてみましょう。

通常の積分と同じように計算しようとすると、左の図の場合、右端の値がゼロに収束、左端の値がゼロに収束する(ように描いたつもりな)ので積分値はゼロに収束してしまいますが、実際の積分値は何らかの有限値になりそう・・・ですよね?

 

右の図においては、右端の値は正の無限大、左端の値は負の無限大に近づくので、積分値は正の無限大に発散しそう・・・

ですが、実際の積分値は有限値になることだってあり得るのです。

 

というわけで、きちんと積分値を求めるときには、定義に従って計算をしていくべきです。

しかし実際の演習問題では、通常の定積分のように計算しても正しい値が求められることも多いです。

なので、不慣れな方や、解くスピードを要求されている時には通常通り計算しても良いのかもしれません。

 

繰り返しますが、広義積分は定義に従って計算すべきです。

通常通り計算した場合には、確認の意味で、定義に従った計算方法で再度計算してみることをお勧めします。

いちいち確認しなくても、通常通りの計算で正しいと言い切れるようになれたらいいですねぇ。。。

作成者:SLA