2019年1月16日
【物理のミニクイズ】手袋したままスマートフォンを触っても反応しないのはなぜでしょうか?
こんにちは!
1月の学びポイントと一緒に掲示している、物理のミニクイズはこちらでした↓↓
手袋したままスマートフォンを触っても反応しなかった経験はありませんか?
どうしてスマホでそういったことが起こるのでしょうか?
以下、解説です!
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最近はスマホの普及が原因で、公衆電話が減ってきました。
今やそれがない生活が想像できないくらい便利なスマホですが、
冬場には「とある問題」に遭遇する人も多いかもしれません。
そう、「手袋を取らないとタッチパネルが反応しない!」問題です。
今回はタッチパネルの原理を解説することで、仙台の冬ではちょっと厄介なこの現象の謎を解き明かしたいと思います。
実は、この問題を考えると、高校の物理で習った「コンデンサ」の話が登場します。
というわけで、まずはコンデンサの仕組みの復習から始めてみましょう。
コンデンサとは、電気を蓄えたり放電したりする機能を持った電子部品のことで、
基本的には、空気や絶縁体を挟み向かい合わせた2枚の金属板によってできています。
まず、図1の回路を参照しながら、コンデンサの充電の仕組みについて復習します。
スイッチ1を入れ電圧Vの電源とコンデンサをつなぐと、一方の金属板はマイナスに、もう一方の金属板はプラスに帯電します。
これによって、コンデンサに電荷が蓄えられ(充電され)ます。
蓄えられる電荷の大きさQと、電圧Vの間には、「Q=CV」という比例の関係があります。
比例定数Cは「静電容量」と呼ばれ、静電容量が大きいほどたくさんの電荷を蓄えることができます。
<図1. コンデンサの充電>
次に図2の回路を使って、コンデンサの放電について考えます。
スイッチ1を切り、スイッチ2を入れると、充電されたコンデンサから回路に一瞬だけ電流が流れます(放電)。
図3に示すように、このとき回路に流れる電流量は、蓄えられていた電荷Qに依存し、静電容量Cが大きいほど電荷Qは大きいので、この電流量は静電容量Cに依存することになります。
<図2. コンデンサの放電>
<図3. コンデンサ放電時に流れる電流>
コンデンサの充電・放電と静電容量の関係について、理解できたでしょうか。
今回のテーマであるタッチパネルは、まさにこのコンデンサの充放電と静電容量の変化を利用しています。
それでは、コンデンサを用いたタッチパネルの話に移りましょう。
タッチパネルの表面には、図4のように2種類の電極板が張られており、それぞれの電極板の隙間が全てコンデンサになっています(図4の赤と青の電極板で一つのコンデンサではなく、一つの電極板上の電極パターンがコンデンサ)。
違う言い方をすると、我々の触っているガラス面の下には、たくさんのコンデンサが敷き詰められています。
このタッチパネル表面に敷き詰められたコンデンサは、それぞれ図1のような回路に接続されており、2つのスイッチのオンオフが常に繰り返されることで、放充電を繰り返しています。
また、コンデンサが接続されている回路に流れる電流量の大きさは常に監視されおり、電流量が変化すると、すぐに検出される状態になっています。
<図4. タッチパネルのガラス表面の下にある2つの電極板(センサー)>
一つの電極板上には一方向に連なった電極のパターンがつくられていて、
その電極パターンがコンデンサとなっている。X側センサーでX座標を、Y側センサーでY座標を測定し、どこでタッチされたのか検知できる。
では、そんなタッチパネルに、指を近づけると何が起きるでしょうか。
タッチパネルに指を近づけると、人体は少しだけ電気を通すため、図5のように指(導体)-空気orガラス(絶縁体)-回路という新しいコンデンサが形成されます。
<図5. タッチパネルに指を近づけた際に形成される新しいコンデンサの概念図>
ここで、コンデンサの静電容量とコンデンサから流れ出る電流量の関係を思い出してください。
指の近くのコンデンサの静電容量が増加するとコンデンサを出入りする電流量が増加するので、コンデンサに流れる電流量は、図6のグラフ(黒)からグラフ(赤)のように変化します。
タッチパネル上の電流量の大きさは常にモニターされているため、コンデンサの電流量の変化はすぐに検知され、画面の特定の部分が「タッチされている」ことが認識されます。
<図6. 電流の時間変化>
静電容量が変化すると黒線から赤線に。横軸は時間、縦軸は流れる電流の大きさを表し、コンデンサに流れ込む電流を正、流れ出る電流を負として描かれている。
以上をまとめてみましょう。
スマホのタッチパネルの表面には、たくさんのコンデンサが敷き詰められています。
それらのコンデンサに流れる電流量は、モニタリングされています。
そんなタッチパネルに指を近づけると、指に近いコンデンサから回路に流れる電流が変化し、
その変化が検出されることによって、タッチされた位置が特定されます。
これが、スマホなどに用いられている、コンデンサを用いた「静電容量式」タッチパネルの仕組みです。
それでは、最初の「手袋を取らないとタッチパネルが反応しない!」現象について考えてみましょう。
手袋をつけると指とタッチパネルの電極との距離が大きくなります。
距離が大きいと指と回路の間に作られるコンデンサの静電容量は小さくなり、回路内に流れる電流量の変化によって静電容量の変化を検知することができなくなります。
これがタッチパネルが反応しない原因となります。
ちなみに、最近売られている「スマホ操作ができる手袋」は、指の部分に金属の糸が縫い合わされており、指と手袋が電気的につながります。
そのため、スマホ対応の手袋をすれば、静電容量の変化に効くのは電極と手袋との距離になるので、静電容量の変化は小さくならず、タッチを検出できるのです。
以上、今回は静電容量方式のタッチパネルについて説明しましたが、実はタッチパネルの原理はこれだけではなく、他の方法を用いたタッチパネルも周りにあふれています!
それらがどういう仕組みで動いているかを調べてみると、また違った面白さが発見できるかもしれません。