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2016年6月6日

第1回アカデミックスキル入門セミナー「大学生の本の読み方」

SLAでは、4月25日に第1回「アカデミックスキル入門セミナー」を開催しました。

全8回を予定しているこのセミナーでは、
SLAの先輩が大学生の学びに必要なスキルを、45分間でお伝えします。

実際に先輩が使った書籍やノートを紹介したり、簡単なワークショップを行ったりしながら、
先輩たちの学びのスタイルに実際に触れることができます。
先生に聞くにはちょっと敷居が高いけど、誰かに訊いてみたい……
そんなスキルをお伝えすることを目指しています。

以下では、第1回のセミナー「大学生の本の読み方」の概要をお伝えします。

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大学生の学びとは?高校と大学の違い?
大学の専門科目では、実験や調査、議論、発表などさまざまなカタチの学びが行われます。
また、授業で受動的に学ぶだけでなく、自分の学びたい学問分野を探求することも可能です。
学年が上がるごとに、専攻やゼミを選択し、卒業論文や卒業研究を仕上げるなど、
自分の興味に応じて主体的に学ぶことが求められるようになります。

また、授業では、実験や観察、調査、精読を通してさまざまな学説や観点を知り、
お互いに学び合うことが成長のカギになります。
自分が抱いている興味は、学問的に正しいと認められた方法で探求することにより、
はじめて専門知として認められます。
まとめれば以下のようになります。

授業 + 興味 ⇒ 大学生の学び
興味 + 方法論 ⇒ 専門知

知識を得るための読書
学問的な知識を得、他人と有意義な議論を交わし、新発見を文章にまとめるためには、
その分野でこれまでに何が明らかにされてきたのか、先人が何に問題意識を持ち、
どういった手段でそれを問いに答えてきたのか、読書を通して知る必要があります。
それは、知識を得るための読書です。

発想を得るための読書
しかし、本を読む意義はそれに限られません。
新しい発見を得るためには、自分の専門の分野以外の知識も必要です。
得られるのは知識それ自体だけではありません。
難解な哲学書を読み、緻密で精緻なロジックの展開を追っていくときには、
日常とは異なる頭の使い方が必要です。
論理的な展開に慣れた頭で、詩や小説など比喩や論理の飛躍が多い文体に触れれば、
それ自体が新たなインスピレーションを提供してくれるかもしれません。
知識を得るだけではなく、さまざまな頭の使い方を体感することもまた、読書の意義です。

テーマを決めて、本を探そう
まずは概要を押さえる
では、以下では興味を持ったテーマについて具体的に深く調べる方法を紹介します。
最初は、扱いたいテーマの概要や通説を押さえましょう。
最初に全体像が頭に入っていれば、細部の知識を学んだ時に、
それぞれの位置づけを押さえることができます。

ここで、役に立つのが専門事典や百科事典と、それらのオンライン・データベースです。
専門事典は少し難しいかもしれませんが、全体像だけでも掴むつもりで読んでみましょう。
専門事典の中には、東北大学図書館のHPの「データベース」の項目から
電子データにアクセスできる場合があります(学内アクセス限定)。
「Japan Knowledge」というサイトでは、『日本大百科全書』『日本国語大辞典』『会社四季報』
『現代用語の基礎知識』など調べ物に便利なコンテンツをまとめて検索できます。
残念ながら事典に項目が無かったり、自分の理解のレベルにあった説明がない場合もあります。
その場合は、より一般的な検索キーワードを使うと、必要な予備知識が手に入る場合もあります。
例)伊達政宗の合戦(個別的)<戦国時代の合戦(一般的)
  仙台の地名はどのように名付けられたか(個別的)<仙台の歴史(一般的)

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知識を積み重ねる
検索で見つかった本を絞り込む
辞典やデータベースで概要を押さえたら、「OPAC」(大学図書館の書籍の検索サイト)や
「Cinii」(論文および大学図書館の書籍の検索サイト)で学術的な書籍を探しましょう。
テーマによっては、検索にかけるとたくさんの本がヒットします。
「はじめに」「目次」「あとがき」の文章や本の全体を簡単にチェックして本の内容や難易度を確かめ、
いま読むべき本か見定めてから、本格的な読書に入りましょう。
(セミナーでは、言語学の書籍を参加者に手にとってもらいながら、
入門書と専門書の違いについて解説しました。)

レポートに引用しても良い書籍
本によって学術的価値には違いがあります。
1-2年生のレポートには、岩波新書やブルーバックスのような「新書」、
講談社メチエや有斐閣アルマのような「選書」が、学術書と一般書の橋渡しとして最適です。
ここで役立つのが、「新書マップ」というサイトです。
テーマとキーワードから、関連するテーマの新書や選書を芋づる式にたどることができます。

関連書籍は芋づる式に見つかる
本を読んでいると、その本が参考にした本、批判している本、あるいはその分野の古典を引用し、
それに対する著者自身の見解を述べていることがあります。
それらの中で興味の湧いたものを読めば、関連分野への理解を深められます。
前の学説を批判するために引用する場合もあり、継承するために引用する場合もあるでしょう。
何を批判継承しているのか、その根拠は何か、自分はどちらを妥当と思うか、考えながら読んでみましょう。
専門分野を研究する場合には、様々な学説が先陣の何を批判し何を継承したか、
自分なりに学術の流れを整理することが必要です。
先行研究の整理は、良い研究の第一歩です。

ちょっと役立つテクニック
自分の本には、付箋を使って気になる個所をマークしたり、
傍線や書き込みをして気になる箇所をチェックしましょう。
重要箇所に付箋を貼っておくと、後から読み返したときに、付箋の箇所を読むだけで概要をたどれます。
レポートに使う本の場合は、使えそうな個所、気になる箇所をあらかじめマークすることで、
効率よくレポートを書くことができます。
もちろん、図書館や人から借りた本には、書き込みをせず、付箋をはがした状態で返しましょう。

本の読み方は人それぞれで、ここで紹介したのは探し方と読み方の一つの例です。
先生や先輩のやり方に倣ったり、自分で必要だと思う方法を試したりしながら、
自分のやりかたを探していきましょう。

(SLA ライティング担当)

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